在宅訪問管理栄養士は、高齢者や療養者がご自宅で安全かつ快適に生活し、健康な生活を送るための栄養管理を提供する専門職です。
近年、高齢者を主として在宅療養者が増加傾向にある一方で、その増加するニーズに対応できる在宅訪問管理栄養士の数は、決して十分とは言えません。
そして、この在宅療養者に対する在宅訪問管理栄養士の不足の問題に対応するため、特定分野認定「在宅訪問管理栄養士」が設置(2011年〜)されました。
これは、在宅医療に携わる多職種と連携し、療養者の疾患や栄養状態に合った栄養食事指導を行うことが出来る管理栄養士であり、その活動で療養者が在宅での生活を安全で快適に継続し、生活の質(QOL)の向上もはかることが出来ます。
在宅訪問管理栄養士の業務
在宅訪問管理栄養士は、在宅療養者のご自宅に訪問して栄養・食事指導を行います。訪問は療養者ごとに月に1〜2回、1回の訪問時間は30〜60分程度が多いです。
そこでは療養者の食事状況・栄養状態についてヒアリングして、食生活の問題を解決できるよう指導します。
栄養・食事指導の内容は、
- 食事管理
- 偏食や病態などを改善するための提案
- 体重管理
など多岐にわたります。また、療養者の食欲や食べものの好き嫌い、嚥下機能の状態によって、一人ひとりに合わせた栄養指導を行うことが大事です。
在宅訪問管理栄養士の勤務先としては、医療保険が適用される「在宅患者訪問栄養食事指導」が可能な事業所や、介護保険が適用される「居宅療養管理指導」が可能な事業所が挙げられます。
※在宅患者訪問栄養食事指導ができる事業所とは、病院やクリニック、診療所などの医療機関のことです。
一方、居宅療養管理指導ができる事業所には、介護老人福祉施設や通所施設(デイケア)、ケアハウスなどが該当します。
また、そのほかにも各種事業所に所属せずに、指定事業所と契約してフリーランスとして働いている在宅訪問管理栄養士もいます。
くわえて最近では、在宅患者の訪問栄養指導サービスを実施している比較的規模の大きい薬局などで、管理栄養士を積極的に採用していると、たびたび聞き及びます。
このような経路によっても、在宅訪問管理栄養士の活躍の場は徐々に広がりつつあるのだと云えます。
在宅訪問栄養食事指導とは
在宅訪問栄養食事指導は、在宅に訪問し、利用者の栄養食事指導を行うサービスのことです。
利用者の状況によって、医療保険または介護保険(介護保険では居宅療養管理指導)で支援を行うことができます。
対象となるのは、栄養学的な課題をかかえている人です。糖尿病や腎臓病などの慢性疾患に対して管理が必要な人、低栄養状態、摂食嚥下障害の人が挙げられます。
在宅訪問栄養食事指導の介入依頼は、居宅介護事業所のケアマネジャーからの場合が多いですが、訪問看護師から依頼されることもあります。主治医から指示を受けるルールに従い、依頼があれば、まずは主治医に栄養介入の必要性があるかを確認し、指示栄養量や病歴などの情報を得てから介入を開始します。
栄養指導について
管理栄養士が行う栄養指導については、基本的には、療養上の管理を行う主治医から指示を受けるルールとなっています。
そのため、依頼があれば、まずは主治医に栄養介入の必要性があるかを確認し、指示栄養量や病歴などの情報を得てから介入がスタートします。
具体的な介入内容は、体重減少傾向の高齢者に対する栄養強化や、摂食嚥下障害の人への嚥下調整食指導などがあります。
管理栄養士は食事時間に訪問看護師やケアマネジャーと連携し、療養者や家族に寄り添った支援を考え、栄養ケア内容の計画や見直し、訪問の継続可否などを判断する役割を果たします。
管理栄養士が大切な理由
管理栄養士の介入による最大のメリットは、利用者の栄養状態が改善することによるQOL向上です。
実際に、多くの事例で栄養状態が改善され、体重増加などの効果が出ています。
また、関連職種にとっても良い効果があります。訪問看護師の介入には時間の制約があるため、栄養課題の解決には限界があります。
そこで管理栄養士の専門知識を活用することによって食事・栄養に関する課題に迅速かつ専門的に対応が可能になります。
たとえば、嚥下調整食の指導では、家族やヘルパーへの調理指導を行うことが可能になり、食事支援を効果的に行えます。また、経口摂取による栄養管理においても、管理栄養士の指導によって栄養摂取量の増加が実現し、栄養状態が改善するケースが多く見られます。このように、在宅訪問管理栄養士の介入は、概して利用者や関連職種にとって大きなメリットをもたらすと云えます。