以前のコラムで、管理栄養士についてお話させていただきましたので今回は、「管理栄養士の職業」についてお話したいと思います。
管理栄養士の職業の遍歴
欧米を主とした先進諸国のなかで「栄養」に関する国家資格が設置されている国は多くありません。少し時代と栄養に関してふれたいと思います。
明治維新から西洋化・近代化によって、食文化も、それまでと比べ大きく変化して、さらに近代化のために必要となる殖産産業の工場、陸海軍の軍隊といった大人数に対して食事を提供する場面が多くなりました。それに伴い食事に含まれる栄養についての知識も、産業力および軍事力の向上のための要素として、重視されるようになりました。
文豪の森鴎外(森林太郎)も関与した明治期軍隊での脚気をめぐる玄米・白米論争は、こうした社会状況を反映するものであったと云えます。
そうした背景もあり、1924年には愛媛県出身の佐伯矩博士が栄養研究所を立ち上げて、その2年後の1926年には日本初の栄養手(栄養士)が誕生しました。
戦後、1947年に「栄養士法」が制定されて国家資格となったのです。更に1962年には、より上級の栄養に関する資格である管理栄養士が設けられました。管理栄養士になるためには、最初に栄養士の資格を取得し、その後に実務経験を積んだり、あるいは大学などの養成機関で全課程を修了して、最終的には毎年実施されている管理栄養士国家試験に合格する必要があります。
現在の管理栄養士の役割
現在、栄養士・管理栄養士が主導する「主食・主菜・副菜」という基本的なアプローチを取り入れた栄養政策が日本全国で実施されています。
地元の食材を活用した健康的な食事の指導が行われ、被災地であっても管理栄養士や栄養士による健康を考慮した食事指導が行われています。日本では、約100年にわたって栄養専門職の役割を重視して、その養成を行ってきました。
そうしたこともあり、近年あらたに栄養政策や科学的なデータの蓄積、国民の健康や栄養に関する調査を通じて栄養専門職の重要性が認識されつつあります。
また、社会保険診療報酬や介護保険報酬においても、管理栄養士が栄養管理業務を行って報酬を申請することができます。
さらに、特定健診や保健指導の担当者としても活躍しています。そのため、さきの歯科衛生士と共に管理栄養士もまた、今後の社会においてさらなる活躍が見込まれる職種であると云えるでしょう。
将来の進路について考えている中高生の皆さんや、そのご父兄の皆さまに是非、ご周知いただければ幸いです。