前のコラムの末尾に挙げましたミゲル・デ・セルバンテスによる「ドン・キホーテ」(1605)内の言葉をご紹介させていただきました。
‘‘Every toooth in a man’s head is more valuable than a diamond.’’
「頭の中にある全ての歯は、ダイアモンドよりも価値がある。」
原文にある「head」は和訳しますと「頭、目、耳、鼻、顎を含む体の部位」となり、その中にはもちろん「お口」も含まれいます。
前回のコラムで書きました18世紀頃の西欧での砂糖の普及と、それに伴う虫歯の増加から生じる歯科医療の変化に関連させながらお話したいと思います。
歯の治療者について
この時代に、それまでの虫歯を抜く「歯抜き師」による、いわば原初的な歯科治療であったものから変化をして、抜歯後の外観や機能の改善、修復を行う「歯の治療者」が職業として広く認知されるようになりました。
「歯の治療者」と「歯抜き師」の大きな違いは、
お口を含む人体の構造や、さまざまな材料についての知識の広さと深さであると云えるでしょう。
つまり、歯を抜くことを業とする職人であった「歯抜き師」と比べて、
18世紀にあらわれた「歯の治療者」は、前回のコラムにて出てきた「錬金術師」からの系譜に連なるものであると云えます。
そして18世紀に、こうした錬金術師の一人であるヨハン・ベトガーがドイツ東部の都市マイセンにて、初めて西欧での陶磁器の製造に成功しました。
陶磁器の製造は、歯科医療にも大きな影響を及ぼしました。
それは、陶磁器の製造技術を用いて人工の歯(陶歯)を製造したことです。
この陶歯を用いた入れ歯は、当時の技術水準においては大変に優れたものでした。
原初の入れ歯
当時は、陶磁器と同じように白く艶やかな人工歯が並んだ入れ歯は人々を大変惹きつけました。
しかし現在とは違い、陰圧を利用して口腔粘膜に吸着させるものではなく、上下の入れ歯がバネで繋がっているので、食いしばらなければバネの力で口から飛び出してしまうようなものであったと云われています。
同国1ドル紙幣に描かれたアメリカ合衆国初代大統領である
「ジョージ・ワシントン」の表情は頬が若干膨らみ気味で、口が真一文字に結ばれているようにみえます。
その表情は、バネが仕込まれた入れ歯を着けていたために食いしばっているからではないかと云われています。
現在の入れ歯を作る工程は、
1.お口の中の状態をスキャナー
2.3Dデータにて記録
3.データに基づき、入れ歯の設計
4.CAMのマシニング加工
5.入れ歯が完成
という流れになっています。
こばやし歯科クリニックでは、日本補綴歯科学会の専門医が在籍しておりますのでお気軽のご相談くださいね。