今回は虫歯の増加をきっかけに「歯科医師」が誕生したお話をしたいと思います。
この時代は、西欧諸国が海外へ進出して、世界各地のさまざまな植物や、その加工品が安定して供給されるようになってきたと云われています。
その代表的なものの一つが「砂糖」です。
虫歯の主な原因となるもの
砂糖は、東南アジアあるいはインドが原産とされるサトウキビを主な原材料として作られます。
そして、これが西欧諸国で広く普及するようになると、虫歯も多く見られるようになりました。
現在では、西欧の国々は、虫歯予防をはじめ歯科医療全般について先進的とされていますが、当時はまだそうではありませんでした。
つまり、砂糖と虫歯との因果関係については知られていませんでした。
歯医者の前身
そうした事情から、虫歯の痛みのもととなる歯を抜くことが増えて、それを専門とする職業もまた一般的なものとなってきました。
その職業は「歯抜き師」と呼ばれるものですが、これは18世紀以前から存在して、17世紀初頭刊行の「ドン・キホーテ」作中にも登場します。
砂糖の普及によって虫歯が増加した18世紀の西欧では「歯抜き師」も一般的な職業となりました。
その後、歯を抜くことだけでなく口の中全般を扱う「歯の治療者」と呼ばれる職業も登場しました。
これが現在の歯科医師の直接的な起源であると考えられています。
とはいえ、現在のような歯科医療に関する知識が一般的ではなかったことから、適切な治療を行うことは難しい時代でした。
現代の歯科医療に対する「歯の治療者」の大きな貢献は、入れ歯などの歯科補綴装置についてであったと云えるでしょう。
そして、冒頭に書きました「西欧での磁器生産」が意味を持ってくるのです。
まとめ
今回のコラムの内容をまとめますと、
・西欧諸国による新大陸の発見
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・サトウキビから精製される砂糖の需要からカリブ諸島を主とした大規模なサトウキビ栽培が始まる
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・砂糖が西欧諸国で広く普及し、虫歯が増加
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・「歯抜き師」が一般的な職業となる
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・その後、口の中全般を扱う「歯の治療者」と呼ばれる職業も登場。
この変化に、錬金術師によって編み出された中国由来の磁器の作成法が関係してくるといった流れになります。
箴言
最後に、「ドン・キホーテ」作中にある歯に関しての面白い箴言を以下に示したいと思います。
‘‘Every toooth in a man’s head is more valuable than a diamond.’’
「頭の中にある全ての歯は、ダイアモンドよりも価値がある。」
ミゲル・デ・セルバンテス「ドン・キホーテ」(1605)より