本日は「笑気麻酔」という低濃度吸入鎮静法という麻酔についてお話したいと思います。
笑気麻酔について
笑気麻酔の使用目的は、笑気ガスを使用することにより、歯科治療中における患者様のストレス(歯科恐怖症のある方)を軽減しリラックスした状態にして少しでも快適な状態で治療を受けていただくということです。
「笑気」と命名されているため「笑いが止まらなくなる」といった誤解をされがちですが、そのようなことはありません。
笑気ガスは20%の亜酸化窒素と80%の酸素を混合したものです。
笑気ガスを吸入することにより、心地良い気分になり(アルコール摂取でいえば、ほろ酔い気分)、痛みや刺激を減少させます。
医療で使用する笑気ガスは酸素濃度が大気中の3~4倍です。
それゆえ、高濃度の酸素を吸入しながら行いますのでご安心ください。
治療後には酸素濃度100%の吸入を行うことにより、吸入した亜酸化窒素は直ちに体外に排出されます。
笑気ガスの特徴について
笑気ガスには以下のような特徴があります。
- ・弱い鎮静&睡眠作用があります。
- ・治療終了後、数分で帰宅可能。また、吸入を中止してもすぐに排泄されます。
- ・呼吸器、循環器、消化器にはほとんど影響はありません。
笑気麻酔の利用シーン
次に、笑気麻酔を用いた治療の流れについてお話いたします。
- ①笑気麻酔を行う前に、笑気についてご説明します。
- ②鼻から笑気を吸入していただきます。笑気を鼻から吸入し数分間お待ちいただきます。
- ③数分後に鎮静状態になります。笑気は吸入すると数分で効果が表れます。ほろ酔い気分になり、手足や体がポカポカとしてきます。(これが鎮静状態です)
- ④歯科治療を開始します。笑気は完全に眠りませんので、意識はございます。治療中の応答は可能です。笑気はあくまでも「鎮静」であり「鎮痛」ではありません。それゆえ、「鎮痛」の目的として局所麻酔の併用を行うこともございます。
- ⑤治療終了。治療が終わり次第、笑気の吸入を中止いたします。10分ほど様子をみて異常がなければご帰宅となります。
笑気麻酔はこのように歯科治療に対し恐怖感がある場合や嘔吐反射が強く治療を行うのが困難な場合に適応いたします。
全身麻酔と違い完全に眠ることはありませんので、治療中に施術者と意思疎通ができるという点も特徴です。
笑気麻酔を利用できないパターン
しかしながら、すべての患者様に適応できるわけではありません。
次のような場合は適応できません。
- ・歯科治療の必要性が理解できない患者様。(例えば、2歳以下の幼児の患者様は鼻マスクを使用するため機器に怖がってしまい治療の協力を得られないことがあるからです。)
- ・鼻がつまっている(鼻炎による鼻詰まりなど)患者様。笑気ガスは鼻から吸入するためです。
- ・中耳炎の方、2か月以内に眼科の手術を受けた方、妊娠初期の方。ガスを使用するため、体に閉鎖腔があるとガスが排出されずにたまってしまうためです。
また、肺気胸の既往の方や腸閉塞の既往の方は使用には注意が必要ですので、医科の先生にご相談ください。
以上が笑気麻酔についてのお話でした。歯科治療に強い恐怖心がある場合はお気軽に先生にご相談くださいね。