「睡眠時無呼吸症候群の病態」についてお話させていただきます。
睡眠時に「大きないびき」のような音を家族や近くで寝ている方に指摘されたことはありませんか?
「睡眠時間はきちんととっているのに日中に強い眠気がある」
「熟眠感がない」
「睡眠をとっているのに倦怠感がある」
「寝ている間の呼吸困難感」
これは「いびき」ではなく、一時的に呼吸が停止してしまっている状態なのです。
ひょっとしたら「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群により、2012年に起きた痛ましい事故(高速ツアーバスの運転手の睡眠時無呼吸症候群の症状による、居眠り衝突事故、多数の死傷者が出ました)があったことを覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下してしまいます。
呼吸が止まるので一度目を覚ましますが、再度、入眠するとまた呼吸がとまり目を覚ましてしまいます。
睡眠中にこのようなことが繰り返されるため深い睡眠がとれなくなります。
その結果、日中に強い眠気が出現してしまいます。
また、この病気の怖いことは,睡眠中の低酸素や日中の眠気などによるストレスにより、高血圧・脳卒中・心筋梗塞といった疾患の発生を増加させることです。
糖尿病・高脂血症もしばしば合併します。
これらの合併症により,突然死される方もいらっしゃいます。
睡眠時無呼吸症候群の原因
我が国(2000年時)では,AHI=無呼吸低呼吸指数が20以上の患者さんでは,20未満の患者さんに比較して、明らかに寿命が短いということが報告されています(睡眠呼吸障害研究会による)。
日本での潜在的な患者数は約500万人以上と推定(成人男性の9%、成人女性の3%が潜在と推定)されており、実際に治療している人は、その約2割程度のようです。
理由としては、睡眠中に生じるので無呼吸の状態の時間があることを気付きにくく自覚しにくいということが考えられます。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、空気の通り道である気道が塞がってしまうからです。
気道が塞がってしまう主な原因は「肥満」です。
体重増加により、のどに脂肪が蓄積して気道が狭くなり、あおむけで寝ることでさらに気道が狭くなってしまいます。
この狭くなった気道を空気が通るたびに大きないびきが生じます。
気道が完全に塞がれたときに無呼吸となります。
実際に「肥満」は睡眠時無呼吸症の患者さん全体の60%以上にみられます。
ただし、「肥満」の人だけにみられるとは限りません。
やせ型の人でも、「下あごが小さい」「下あごが後退している」、「扁桃腺が大きい」といったことがあると、気道が狭くなりやすく睡眠時無呼吸症の原因になります。
また、閉経後の女性や高齢者の方でも睡眠時無呼吸症は起こりやすいです。
1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような睡眠時無呼吸症候群を放置すると、眠気による交通事故などを引き起こす確率が高くなるためすぐにでも治療が必要です。
次回へ続きます。