今回は「感染症と滅菌室について」お話をさせていただければと思います。
患者さんが安心・安全に治療していただくために日々の感染対策や滅菌作業は紙一重なのです。
感染症とは
まずはじめに「感染症」は、細菌やウイルスを病原体として、人から人、あるいは動物や虫などから人にうつる疾患全般をさすものであり、新型コロナウィルス感染症をはじめ、インフルエンザや肝炎やコレラや赤痢など、さまざまな種類があります。
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入、定着し、増殖することによって生じるのですが、感染しても、症状が発現する場合(顕性感染)と、発現しない場合(不顕性感染)があります。
そして、後者の不顕性感染である場合、知らない間に保菌者(キャリア)となって病原体の感染源となり感染症を拡げてしまう可能性が高いことから、その万全な予防対策は、我が国での新型コロナウィルス感染者数の推移を見ても理解できるように、なかなか難しいように思われます。
今もなお考えなくてはいけないことは、対策感染経路を遮断することがとても重要であると云えるでしょう。
感染症の原因
私たちの日常生活の中で注意するべき主な感染経路として、下記に3つが挙げられます。
- ①接触(経口)感染は、皮膚、粘膜の直接的な接触や、人々の手が触れる表面を介した接触によって病原体に感染することです。
- ②飛沫感染は、咳や会話などによって飛散した飛沫に含まれる病原体を吸い込むことにより感染することですが、飛沫感染の飛沫は水分を含むため、その届く範囲は感染源から1~2m程度とされています。そのため、これまでの新型コロナウィルス感染症にとられた感染予防対策と同様になりますが、マスクの着用や、感染源から距離をとることが有効な対策となります。
- ③飛沫に含まれる水分が蒸発した後の微細な粒子は飛沫核といい、これが大気中に埃などと共に浮遊して病原体が拡散し、その大気を吸い込むことによって感染することを空気感染または飛沫核感染といいます。
これら感染経路となる状況はすべて、私たちの歯科医院を含めて、歯科臨床においては日常的に生じていることであるのです。
今回のコロナ禍以前から、当然のこととして、感染症への予防対策を徹底して行ってきました。
歯科医院の感染症対策
では、どのようなことが歯科医療機関での感染症予防対策であるのか、以下、当医院での具体例をいくつか示したいと思います。
- ・治療スタッフのマスクの着用
- ・ラバーグローブなどの使い捨て(ディスポザーブル)の徹底
- ・治療スペースを個室あるいは半個室、区画を設け空間を遮断する
- ・定期的な換気
- ・治療前のうがい
- ・アルコール消毒
- ・治療前の検温
さらに、当医院は比較的広く、スタッフ全員で院内各所を清潔に保つように心掛けていますが、歯科治療の際にお口の中で使われるさまざまな器具に関しては、特に専門の第二種滅菌技士を取得したステリライズスタッフが各診療フロアにいて、使用済み器具の洗浄、包装、滅菌作業を行っています。
滅菌室について
ここからは滅菌室のお話になります。
この滅菌作業は、器具の形状、そして耐熱、耐水性などの性質によって多少方法が異なりますが一連の流れとしては下記の通りです。
- ①薬液に器具を浸漬させる
- ②大まかな汚れを除去
- ③新たな薬液に浸漬した状態で超音波洗浄機を15分かけ微細な汚れを除去
- ④浸漬する薬液を真水に換えてから再度15分間超音波洗浄
- ⑤その後、器具を取り出し、ウォッシャー・ディスインフェクター(器具除染用洗浄機)にてさらに洗浄
- ⑥器具を乾燥
- ⑦パッキング(包装)
それぞれの器具にあわせてオートクレーブ(高圧蒸気滅菌機)やガス滅菌機を用いた滅菌作業が行われます。
一連の滅菌作業を使用した全ての器具に行うことは、それなりに手間が掛かかりますが、こうした滅菌作業に対するこだわりは、安心、安全な歯科治療を行うためには必須のことであると私たちは考えています。