本日は歯周病と糖尿病の関係についてお話したいと思います。
歯周病と全身疾患との関係をペリオドンタル・メディシンと言います。
特に歯周病原菌が全身疾患に及ぼす疾患については、最たる代表的なものが糖尿病です。
歯周病があるから糖尿病に罹患するということもありますが、特に「持病として、糖尿病をお持ちの方は、歯周病源菌により病状が悪化してしまう可能性が高い」ということです。
逆の関係もあり、「糖尿病の罹患者の場合は歯周病を悪化させてしまう」ということでもあります。
糖尿病の統計
平成28年の「国民栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる者の人口に対する割合は男性16.3%、女性9.3%であり、年齢が高いほど糖尿病有病者の割合が高くなる傾向にあります。
また、糖尿病有病者の割合は最近20年間で増加傾向にあります。
日本歯周病学会が発行した『糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン改訂第2版』には、歯周病と糖尿病の関係を裏付ける研究結果が数多く示されています。
歯周病の原因
歯周病の原因は、歯の表面に付着している「プラーク」です。
プラークとは、歯周ポケットにたまった歯垢(しこう)のことであり、歯周病の原因となる細菌の塊のようなものです。
糖尿病に罹患している方は、高血糖状態が続くことによって歯周病原菌による炎症をおこしやすくなり(歯周病原菌を元気にさせてしまいます)、
その結果、炎症性サイトカインという物質が出現。
この物質のはたらきによって歯を支える骨(歯槽骨)が破壊(骨吸収)されてしまいます。
現在、2型糖尿病患者では歯周病の発症率が正常人の約2.6倍も高くなると言われています。
逆に、歯周病があると、炎症性サイトカインが歯肉の毛細血管から血流にのって全身に運ばれ、膵臓から分泌されるインスリンの働きを悪くしてしまいます。
このように、糖尿病による高血糖状態と歯周病の関係はお互い「悪化の原因」ということです。
歯周病、糖尿病への対処法
しかしながら、対処法がないわけではありません。
『糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン改訂第2版』に記載されている研究結果では、
「血糖値を改善することにより歯周病が改善(もちろん、歯磨き励行は必須です)できる。歯周病を治療することにより血糖値が改善できる」
と示唆されています。
歯周病があり糖尿病に罹患されている患者様は、積極的に歯周病治療を受けることをお勧めいたします。
歯周病治療により、「HbA1cが0.36%改善した」という統計結果がガイドラインでは示されています。(HbA1cが6.5%未満が正常値です)
歯周病がなくても、持病として糖尿病の患者さんや糖尿病予備軍(血糖値が高め)の方は、血糖値のコントロールに努めて欲しいと思います。
血糖値のコントロールは歯周病の併発だけではなく、糖尿病の三大合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)、心筋梗塞、脳梗塞の予防にもなります。
健康診断で糖尿病や糖尿病予備軍の可能性を指摘された方は、ためらわずにかかりつけの内科医を受診していただき、血糖値のコントロールに努めていただきたいと思います。
また、かかりつけの歯科医を見つけ、定期的に歯科検診を受診していただき、歯周病のチェックや治療に努めていただきたいと思います。
詳細に関しましては、かかりつけの医院や歯科医院にご遠慮なくご相談ください。
また、当院の1階には糖尿病治療専門の内科が入っておりますので、下記にてご相談してみてください。
井口内科 中央|2022年9月1(木)開院 (iguchi-jinhinyoki-chuo.jp)