食材として「しいたけ」は、生のものと干したものがあります。生のしいたけは、新鮮な状態で調理に使われます。一方の干ししいたけは、乾燥させることにより、保存性が高まり、さらに特筆すべきこととして、独自の旨味や栄養価が加わります。
あまり目立つものではありませんが、干ししいたけは、我が国の食文化に深く根付いた食材であり、具体的には、9世紀頃に中国から日本に伝わったとされています。その当初は輸出用に生産されていましたが、16世紀頃からは国内での料理にも取り入れられるようになり、汁物や煮物などに使われるようになりました。
その後、江戸時代には人工栽培が始まり、生産量が増加して、近代に至り高級食材として認知されるようになり、戦後になると、全国的に生産地が拡大して、現在では、大分県が国内生産の約半分を担っています。
この特徴的な性質を持つ干ししいたけには「冬菇(どんこ)」「香信(こうしん)」「香菇(こうこ)」の3種類があります。
冬菇はカサが開き切る前に収穫される肉厚で香り豊かなタイプであり、煮物やてんぷらに適しています。
香信はカサが開いた薄型のもので、戻す時間が短く、多くの料理に用いることが出来ます。
香菇は前述二者の中間的な形状のもので、贈答用としても好まれています。
先述したように干ししいたけは栄養価が高く、生しいたけと比較すると、食物繊維は約10倍、ビタミンDは30倍以上、カリウムは約7倍含まれています。これらの成分は腸の健康を促進し、骨を強くし、高血圧予防や免疫力向上に役立ちます。
また、干す工程で生成されるグアニル酸やレンチオニンは、旨味や香りのもとになるだけでなく、血液をサラサラにして、血栓症予防にも効果的です。また、しいたけに特有のエリタデニンという成分も血中コレステロール値を調整し、動脈硬化や高血圧の予防に寄与します。
また干ししいたけの戻し汁には、栄養が多く含まれているため、これを汁物などに活用すると無駄なく栄養を摂取することができます。そこから、干ししいたけは、生のしいたけ以上に栄養と風味双方で料理を支える万能な食材であると云えます。