インプラントオーバーデンチャーとは
インプラントオーバーデンチャーは入れ歯(義歯)を2〜4本のインプラント体で固定する治療法です。
人工歯根となるインプラント体を顎骨に埋入し、そのインプラント体によって上に被せる入れ歯を固定します。
これにより、入れ歯(義歯)が安定して、食事や会話中でのズレが大きく軽減されます。
またこれは総入れ歯(総義歯)のみならず部分入れ歯(部分義歯)にも適用可能です。
従来の総義歯では陰圧により吸着・安定させるか、あるいは部分義歯の場合は、隣の残存歯にバネ(クラスプ)を取り付けて固定することが一般的でした。
しかしながら、これらの方法では往々にして義歯が安定せず、また義歯安定剤などを用いてもズレや噛みづらさを払拭することは困難と云えます。
それに対してインプラントオーバーデンチャーであれば義歯をインプラントを通じて顎の骨にしっかりと固定するため、こうした問題が大幅に軽減されることが見込まれます。
インプラントオーバーデンチャーの施術内容
この治療法は、まずインプラント体を顎骨に埋めるところから始まりますが、その前に様々な検査を経て治療方針が固まるとインプラント体を埋入する外科手術が行われます。
次いで埋入したインプラント体の上に義歯を連結するためのアバットメントというアダプターのような役割の部品を取り付けます。
そしてその後、装着する義歯の方にアバットメントの留め具を埋め込み義歯の固定をはかります。
アバットメントの種類
インプラントオーバーデンチャーには、義歯を固定するためのアバットメントにいくつかの種類があります。
①マグネットタイプ
マグネットタイプは、最も安定感が高いとされ顎骨に埋入したインプラント体と入れ歯の間に小さな磁石を埋め込み、磁力で固定します。この方法は強力な磁力でズレにくく、自分で簡単に取り外しができますが磁力を用いるため、MRI撮影に影響が出ます。
②ボールタイプ
ボールタイプは下顎のオーバーデンチャーに用いられ、インプラントの先端にボール状のアバットメントを取り付け、そのボール状部分で義歯を固定します。これは取り付けやすく、顎骨の退化を防ぐ効果もあるとされていますが義歯と歯茎の間に隙間ができることがデメリットです。
③バータイプ
バータイプは、上下顎にインプラント体を埋め込み、金属のバーで橋渡しをして固定する方法です。埋め込むインプラント体は比較的多いのですが、他方で安定性が高く義歯をしっかり支えます。
④固定式ブリッジタイプ
固定式ブリッジタイプは4本または6本のインプラント体で義歯を固定するものであり、この治療法では、自分では義歯を取り外すことはできませんが顎骨の状態が良ければ手術後すぐに義歯を装着することが可能です。
インプラントオーバーデンチャーは自己負担
インプラントオーバーデンチャーに掛かる費用は、口腔内の状態やインプラント体の本数、固定する方法により異なります。
また、保険適用はされないため、治療費は全額自己負担となります。
そのため一般的な保険適用の義歯治療での費用と比較すると高額になりますが、義歯の安定性や噛む力を考えると、インプラントオーバーデンチャーのメリットは大きいと云えます。
インプラントオーバーデンチャーのメリット/デメリット
インプラントオーバーデンチャーのメリットは、まず噛む力が大幅にアップする点が挙げられます。
天然歯の噛む力を100%とすると、部分義歯では30〜40%、総義歯では10〜20%程度の力しか出せないとされていますが、インプラントオーバーデンチャーであれば、天然歯に近い噛む力が得られます。
また、入れ歯がしっかり固定されるため、食事や会話中でのズレも少なく、噛み心地も良好。部分義歯の場合、バネ(クラスプ)を隣在歯に掛ける必要がないため、残存歯の寿命を延ばすことが可能です。
④の固定式ブリッジタイプ以外の方法では義歯を取り外すことができ、従来の義歯と同様にケアが簡便です。顎骨が乏しくとも、インプラント体を最適な位置に埋入することで治療が可能になります。
デメリットとしては、当治療法は希望される皆さんが受けられるわけではない点があります。
まず、外科手術が必須であるため、持病がある方や常習的な喫煙習慣がある方は治療を断られる場合があります。
部分義歯でのインプラントオーバーデンチャー治療の場合、残存歯に汚れが蓄積し易く、う蝕のリスクが上がります。
さらに、インプラントオーバーデンチャーは保険適用外であるため、治療費が高額になることもデメリットと云えます。
インプラントオーバーデンチャーの治療を希望される場合は、まず、かかりつけの歯科医院で歯科医師に相談することが大事です。
この治療法は総義歯や部分義歯よりも安定性が高く、多くのメリットがある治療法ではあるのですが、費用や適用条件をよく理解した上で、適切な選択をすることが大切でしょう。