全国の歯科医師の人口
現在、我が国では歯科医師の数が過剰であるとされていますが、その背景には、1970年代の厚生省(現在の厚生労働省)と文部省(現在の文部科学省)による政策が大きく関与しています。
当時、子供の虫歯が深刻な問題となり、歯科医師の不足が顕在化していたため、当時の政府は歯科医師数を増員する政策を採りました。これにより、歯学部の入学者定員を超過する事態さえも容認されて、現在の状況が生み出されました。
具体的には、国立大学に新たに歯学部が続々と誕生して、1975年までには現在の29学部にまで達しました。これにより、10年間で歯学部の定員は3倍に急増し、毎年のように歯科医師が増え続けて、現在では約10万人にものぼり、1970年代末期に比べて明らかに過剰な状態となりました。
これにより、社会の変化などによる実際の歯科医師の需要が見誤られたことが明らかになりました。
歯科医師の教育課程
1980年代半ばには、政府が歯科医師の過剰を懸念し、新規参入者を20%削減する方針転換がありました。その後、歯学部の入学定員は減少し続け、2011年現在で27大学29学部となっています。特に私立大学が17学部で入学定員の75%を占め、経営的に厳しい状況に追い込まれています。このため、定員割れの歯学部も存続が難しい状態にあります。
歯科医師の労働環境
歯科医師は臨床研修期間を経て就職する場合でも、7倍の求人があると云われています。また初任給の平均は25万円であり、求人によっては40万円というケースもあります。近年継続的な就職難の時期である中、歯学部卒業生にとっては恵まれた状況といえるでしょう。
意欲的な歯科医師は新たな分野にも積極的に取り組んでおり、特に注目されているのがインプラント歯科治療です。
歯を失った場合、骨に人工歯根を植えて支える治療であり、高額な治療費がかかりますが、需要があります。ただし、歯科医師の数は地域によって異なり、都市部では比較的多い一方で、地方では不足しているところもあります。
そうした事情から、特に新人歯科医師は、現状では歯科治療を受けることが困難な過疎地域に積極的に飛び込むべきであり、また、歯科検診や高齢者のケアなど社会福祉分野においても役割を果たすことが求められています。
さらに地域においては、歯科治療に留まらず、歯科治療がどのような役割を果たすか、広く考える必要もあると云えます。
また、過去の震災で明らかになった誤嚥性肺炎の問題も、口内ケアによって防止できたという教訓があり、今後も多くの場面で活躍が期待されます。